お侍様 小劇場 extra
〜寵猫抄より

    “蜂蜜色 ほかほかvv ”


そろそろお庭も落ち葉がかさこそするようになって。
玄関回りや門柱の周辺などなど、
朝早くにまずはの落葉かきをざっと手掛けるのが、
七郎次の毎朝の習慣になって来た。
この数日は特に、急な勢いで寒くなって来たようで。
ちょいと居周りに出るくらいだからと油断して
上着なしで出てゆくと、
掃除の途中でゾクゾクッと寒気が上って来たりする。

 “いかんいかん。”

独り身ならば自業自得で済むけれど、(済むか?)
でもでも、今の自分には大切な家族がいるのだ、
風邪引きましたと引っ繰り返ってなんかいられない。
寝る前の火の元や戸締まりの点検よろしく、
朝の必要事項に“カーディガンを着ること”が増えた
島田家のおっ母様です、こんにちは。

 「誰との会話だ。」
 「さ、さあ…。」

いやですよぉ、勘兵衛様。
場外の会話です、お気になさらず…と。
愛想笑いを残しつつ、もーりんがとっとと去ってのさて。

 「明け方は冷え込むようになったな。」
 「そうですねぇ。」

芳しい煎茶をそそいだ、
少々重たげな手びねりの湯飲みを運んで来た七郎次が、
湯気の白を吸い込む白い手でどうぞと
居間のテーブルの上へ差し出せば。
すまぬなとの目顔で応じて大きな手が
軽々と包み込んでしまうのが。

 「…………。///////」

実はここだけの話、
七郎次にはたまらぬ萌えポイントだったりする。
何でもない所作なのに、さりげなく頼もしさが現れていて。
そのまま伏し目がちになって湯気を吹くお顔がまた、

 “昔は、たばこをお吸いだった折のお顔がこうだったなぁ。”

それでなくとも執筆中はお部屋へこもるお仕事で、
集中するためにとか手持ち無沙汰だからとか、
そりゃあもうもうかなりの量を吸ってらしたのを、
健康によくないからと、
一念発起した敏腕秘書殿が様々に手を下し、
終しまいには
“たばこ臭いお人とは供寝したくありません”などという
奥の手まで繰り出して。
それでようやく“完全禁煙”にまで持ち込んだのではあるけれど。

 “火を点けるときのお顔は、
  惚れ惚れするほどカッコよくって…vv”

大きめの手でマッチの炎を囲い、
伏し目がちになって
紙巻きの先を見やっておいでの男臭いお顔の、
何とも大人っぽく精悍であられたことか。
それが見られなくなって随分と久しいなぁと、
こういうときどきに、ふっと思い起こす七郎次ではあるが、

 “ああでも、今の私には
  ああまで強硬にダメですなんてお尻叩きが出来るかなぁ。”

勘兵衛との間柄へ微妙に一線引いていた頃は、
それがゆえの強がりからか、
恐れを知らぬ級での強硬な態度も、結構取れていたけれど。
今はといえば、

 「………んん?」

大窓から射し入る晩秋の陽だまりの中、
くせのある髪の輪郭がやわらかくけぶっておいでの、
ちょっぴりまろやかに和んでいる御主の風貌へ
あらためて見ほれているくらいに。

 「〜〜〜〜〜〜。////////」

あああ、いかんいかん。//////
すっかりたっぷり骨抜きだ〜、と。
年甲斐もなくの含羞みに頬を染め、
口元をうにむにとたわめると。
このままでは胸が動悸でどうにかなりそうだから、
さりげなくを装いながら、
窓の外、庭のほうへと視線を逸らしている始末。

 「ああほら、勘兵衛様。
  久蔵とクロちゃんが陽なたぼっこしておりますよ。」

朝晩の冷え込みには、
身を縮めてのくっつき合って、
ネコベッドからなかなか出て来なかったりもしたものが。
陽が昇っての陰の色が濃くなるにつれ、
気温もどんどん上がり出して来たのに誘われ。
お庭へ飛び出してったゲンキンな幼子二人。

 「外とは寒うないのか?」

いくら陽があるとはいえ、風もあろうにと、
肩越しに見やった勘兵衛の視線の先では。
芝草の上でころりんちょと寝転がり、
それぞれの毛並みをほかほか暖めている小さな仔猫らが、
そりゃあ心地よさげにお昼寝の真っ最中。

 「風も多少は吹いておりますが、
  それにも増しての陽の暖かさですからね。」

ニットなぞ着て、じっと動かずにおれば暑いくらい。
あの子らもきっと、遊ぶどころじゃあない
うたた寝してしまうほどにヌクヌクなんですてと。
キャラメル色のぽあぽあの毛並みを
時折 風に遊ばれているメインクーンちゃんや、
つややかな黒い毛並みを陽に濡らしている黒猫さんを、
ほのぼの見やるおっ母様。
特に、メインクーンさんの方は、
綿毛のような金の髪をした
小さな小さな坊やに見える七郎次とあって。
生なりのフリース風、長袖上下をまとった小さな坊や。
かすかな風にもくりくりと撒き上げられる
髪があたってくすぐったいか、
やわやわな頬を小さなお手々でうにむにと擦る、
いかにも拙い仕草が見えるのが、

 「〜〜〜〜。///////」

もうもうもう…vvと相変わらずの萌えを誘うらしい。
こそりとデジカメで撮った陽だまりの写真には、
淡い蜂蜜色に照らされた、二匹の仔猫のお昼寝模様。
本格的な寒いのが来るまで、秒読み態勢となったけれど、
今はしばし、
長閑にお過ごしの島田さんチだったようでございます。




   〜Fine〜 12.10.26.


  *いやホント、
   朝一番、陽が出るすんでからこっちは随分と寒いのですが、
   それが九時を回るころには
   陽が当たる背中なんかがじりじりと暑いくらいになるので、
   滅多な厚着をしたまま庭いじりなんかしてた日にゃあ、
   熱中症 再びとなりかねません。
   こんなことを言ってられるのも、今週一杯なのかなぁ…。

   シチさんとしてはデジカメで撮った陽なたぼっこ、
   某柔道少年へメールで送って差し上げるのでしょうね。

    【 うわあ、
      久蔵もクロもヌクヌクそうだよな〜vv】
    「みゃうにゅvv」
    「まうみゅうvv」
    【 うんうん、
      俺も頬っぺがふくふくだから交ざりてぇ〜vv】

    “…今のは どう“俺も”に掛かってたんだろう。”

     七郎次さん、相変わらず首を傾げてそうです。

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